製造の仕事とは
製造の仕事とは、さまざまな製品をつくり出し販売する「ものづくり」に携わる産業です。製造される製品は家電や日用品、食品、洋服など生活に欠かせないものから、自動車などの機械類まで多岐にわたります。
製造業は、日本の労働者数の6分の1以上を占める大きな産業です。製造業と一口にいっても、多くの職種や業種があります。製造業の主な分類を次に解説していきます。
機械関連
工業用の大型機械から、一般家庭用の家電製品まで、機械の製造を行うのが機械関連の製造業です。自動車や家電製品、農工業機械、船舶などが製造されています。製造は、開発、設計、組立てなどの工程に分けられます。
電子部品・電子デバイス関連
スマートフォンやパソコンなどの精密機器や、さまざまな電子機器の部品を製造する製造業です。技術が進歩するスピードは速く、世界的にも競争率の高い市場に関わっています。特に半導体や集積回路などの製造では、最先端の技術が用いられています。
食品関連
製造業のなかでも、私たちの生活と密接に関係しているのが食品関連の製造業です。身の回りで目にする機会も多く、さまざまな食品が製造されています。加工食品、飲料、菓子類など、毎日大量生産され、製品の種類も豊富です。
医薬品関連
病院の処方薬、一般の薬局で販売している薬をはじめ、医療に関連する製品を製造しているのが医薬品関連の製造業です。医薬品を製造するうえでは、研究・開発や臨床試験なども工程に含まれています。
製造の仕事内容
製造業は、材料からの製品製造から販売までを行います。市場に製品が出るまでに多くの工程を経るため、幅広い職種があります。次に、製造業の主な作業や仕事の内容を解説します。
製造・生産
実際に製品を作る仕事が製造・生産です。製品を企画どおりに製造するため、あらかじめ決められた設計書をもとに、所定の工程にしたがって作業を進めていきます。設計書どおりの製品を正しく製造することが求められる仕事です。
企画・開発・設計
新製品の開発や、最新技術の導入に関連するのが企画・開発・設計です。企画では、市場調査を踏まえて、消費者のニーズに合う新しい製品の構想を練ります。開発・設計では、新製品の製造のほか、既存商品の品質を向上するための技術開発や工程の設計を担当します。
品質管理・生産管理
安心・安全な製品を市場に出すために欠かせないのが、品質管理・生産管理です。品質管理では製品の品質を保証するために規格を定めたり、製品の安全性を確認するための検査を行ったりします。生産管理では製品の余剰や不足を出さないために、生産量や生産スケジュールの管理を行います。
軽作業
商品の製造ライン以外も含め、さまざまな製造に関する作業を行うのが軽作業です。製造ラインでの組み立てや加工のほか、材料の運搬など工程と工程をつなぐ作業、検品やピッキング、梱包や箱詰めなど、製品を出荷するための作業なども含まれます。
営業・販売
製品を販売するための職種が、営業・販売です。商品を販売するために、小売店や代理店とのやり取りを行うほか、新しい製品の販路を開拓するために営業活動も行います。さらに、顧客や市場のニーズを商品に反映させるために、ヒアリングも重要な仕事です。
製造の仕事に就くには
製造業には多くの仕事と職種が存在します。自分の希望や適正に応じた仕事が、幅広い選択肢から選べるのが魅力です。未経験であっても、専門性の問われない仕事からステップアップすることも可能です。以下で製造の仕事に就くためのポイントを解説します。
未経験歓迎の求人も多い
製造業のなかには単純作業や肉体労働もあり、未経験者歓迎の求人もあるのが特徴です。体力に自信がある人、コツコツとした業務が好きという人に向いているといえるでしょうか。きちんとした品質管理や生産管理が行われている環境に加えて、作業はマニュアル化されているため専門的な知識がなくても作業ができます。安全に作業をするための研修も実施しています。
ライフスタイルを考えて応募する
製造業には、長時間稼働、24時間稼働の工場もあります。日勤専従、夜勤専従勤務のほか、日勤と夜勤を組み合わせる「シフト制」があります。シフト制は生活が変則的になるため、自身のライフスタイルに合わせて働くことができるか考えて応募しましょう。
夜勤は平日の昼間に病院や銀行へ行く時間が使える、休日勤務は平日に旅行や習い事など、プライベートを充実させられるなどのメリットがあります。
求人数が増える時期に応募する
3月と9月の年度末には異動や退職が多く、企業の体制が大きく変化します。減った人員を補充するために、製造業でも求人数が増える傾向にあります。
そのため、3月応募で4月入社、9月応募で10月入社を目指して、就職活動のスケジュールを組むことができます。
資格や免許を取る
製造業では、仕事上でさまざまな機器を活用することが多いです。機器の操作に関する資格を取得すれば、製造業への就職や転職に有利となるでしょう。製造業として働きながら資格取得を目指せば、ステップアップや収入アップにもつながります。
フォークリフト
荷物の運搬に使用するフォークリフトの操縦資格です。操作するフォークリフトは最大荷重1トン未満ならフォークリフト特別教育、最大荷重1トン以上ならフォークリフト運転技術者資格の取得が必要になります。35時間程度の講習が必要ですが、合格率は90%を超える国家資格です。
玉掛け技能士
クレーンで重量のある荷物や部品などを運搬する際に、クレーンのフックを掛けたり外したりする玉掛け作業には危険がともないます。そのため、玉掛け技能士資格が必要です。玉掛け技能者資格は、学科と実技の講習を受講後、筆記、実技の修了試験に合格することで取得できます。
危険物取扱者
製造業で危険物の取扱いをする際に必要な資格です。取り扱いができる危険物の種類や範囲で細分化されており、甲種、乙種(第1~第6類)、丙種があります。甲種は受験資格として特定の学歴や実務経験、定められた乙種の免許所持などの条件が設定されています。
機械保全技能士
機器のメンテナンスに関わる資格です。特級~3級の4つの等級が設定されています。2級以上の受験には実務経験が必要です。特級や1級の合格率は16~20%とやや難易度が高いですが、3級は66%ほどです。
衛生管理者
一定規模の工場で配置が義務付けられている国家資格です。特定業種に限定される第2種、有毒業務を含むすべての業種に携わる第1種があります。最終学歴に応じた実務経験が受験資格として求められています。
製造の仕事に必要なスキル
製造業は未経験でも働きやすい業種です。ただし、専門的な知識以外にも必要とされるスキルがあります。製造の仕事に必要なスキルを次に解説していきましょう。
ものづくりへの興味
製造業は、製品をいかに正確に、いかに早く製造するかが常に求められています。製品をつくり上げることに興味や喜びを感じる人や、ものづくりへの興味をもっている人なら、生産工程の改善などにも意欲がもてるでしょう。製造に関する専門的な知識やスキルも、知的好奇心から進んで勉強したり、吸収したりもできます。
集中力
製造業は作業がマニュアル化されているため、未経験者でも働きやすい仕事です。一方で、同じ作業の繰り返しも多くなります。長時間同じ作業でもコツコツ取り組める、集中力が高い人が向いているでしょう。集中力が途切れてしまうと、作業のミスにつながり製造ラインが止まってしまいます。集中力の高い人なら、生産効率も上げられるでしょう。
粘り強さ
製造業は同じ作業を繰り返すことに加えて、地道な作業や細かい作業をこなす必要もあります。長時間同じ作業ができる、細かい作業もコツコツ取り組める、粘り強さが求められます。飽きっぽい人の場合、作業の細かさにイライラしてしまうこともあります。手先の器用さに自信がなくても、粘り強さがあれば細かい作業もこなしていけるでしょう。
製造の仕事の平均給与
2020年の製造業の平均年収は、全体で453万円です。うち男性は492万円、女性は366万円となっていました。10種類の業種分類の中で、製造業の年収は1位です。製造業全体では高めの年収となっていますが、製造業の生産品目によって年収に差があることに注意が必要です。
たとえば、製造業のなかで1位のたばこは641万円である一方、繊維、日用品、文具、家具インテリアなどの年収は300万円台後半と、大きな開きがあります。
※参考:平均年収ランキング(業種別の平均年収/生涯賃金)【最新版】求人情報・転職サイトdoda(デューダ)
製造の仕事の求人倍率
厚生労働省発表の令和3年8月分の一般職業紹介状況によれば、全体の有効求人倍率は1.14倍です。令和2年度平均の1.10倍と比較してみても、大きな差はありませんでした。一方で産業別の新規求人数を見ると、製造業は前年同月比39.3%と大幅に増加しています。
ほかに増加している業種として、情報通信業の16.7%増、サービス業の18.7%増がありますが、製造業ほどの増加率ではありません。製造業は人手不足が続いているため、有効求人倍率も高く、今後も安定した求人が募集されると予測されています。
製造の仕事の人材確保の取り組み
製造業は有効求人倍率の高さからわかるように、人手不足が深刻です。人手不足の原因には少子高齢化のほか、労働環境が良くないというイメージから就職先として敬遠されがちなことも挙げられます。
製造業の人材確保のために行われている、有効な取り組みについて解説していきます。
労働環境の整備・改善
製造業は、「きつい・汚い・危険」のいわゆる「3K」の仕事であるといわれてきました。製造業のマイナスイメージの払しょくするために、各企業では労働環境の整備や改善が進められています。勤務時間、勤務形態などを見直し、働きやすい環境を整える取り組みも多数行われています。
外国人の採用
製造業や介護業界、農業など、人手不足が深刻化する業種の働き手として、外国人を採用する取り組みも進められています。自国で活用できる技術を取得するために来日する、技能実習制度を活用した外国人の登用や、特定技能のビザをもつ外国人の雇用などが、製造業で行われています。
IT化の促進
人の手に代わってIT技術を取り入れ、業務の効率化を図る企業も多くあります。AIやICT、IoTなどの導入、オートメーション化による24時間稼働の実現、ロボット作業による産業事故や危険な作業の回避などが進められています。
IT化の促進は、デジタルネイティブとよばれる若い世代へのアピールにも有効です。企業の将来を担う若年層の応募を増やすうえでもメリットがあります。